名詞の性の見分け方 9

星の名称には男性名詞が多いのですが、まず例外を少なくするため逃げ道を作っておきます。「Stern {m}:星」の定義を「夜空に輝く天体」とすれば、「Sonne {f}:太陽」、「Erde {f}:地球」は星ではなくなります。

星の種類を示すものは男性名詞

  • Stern {m}:星
  • Planet {m}:惑星
  • Satellit {m}:衛星
  • Komet {m}:彗星
  • Meteor {m}:流星
  • Asteroid {m}:小惑星
  • Quasar {m}:クエーサー
  • Pulsar {m}:パルサー
  • Riese {m}:巨星(キョセイ)
  • Zwerg {m}:矮星(ワイセイ)

例外:

  • Meteor {m}/{n}:流星

男性名詞と中性名詞の場合があります。

  • Schnuppe {f}:流星

本来は、ロウソクの燃えさしのことで「Sternschnuppe {f}」と書かないと流星とは理解されないかも知れません。「Meteor {m}/{n}」は現象としての流星を示すのに対し、「Schnuppe {f}」は地上から眺める流れ星を示します。ところで願いを託す星に「星の燃えさし」とはあまりに味気ない表現ではないでしょうか。そう言えば

  • Sternschnuppenwunsch {m}:流れ星への願い

も男性名詞でした。

  • Gestirn {n}:天体(自ら輝く天体/他の天体からの光を反射して輝く天体)

後述しますが「Ge-」の形をとり空間的連続を表す名詞は中性名詞になります。

惑星のほとんどは男性名詞

  • Merkur {m}:水星
  • Mars {m}:火星
  • Jupiter {m}:木星
  • Saturn {m}:土星
  • Uranus {m}:天王星
  • Neptun {m}:海王星
  • Pluto {m}:冥王星

例外:

  • Venus {f}:金星

金星の「astronomisches Symbol {n}:天体記号」である手鏡 “♀” は女性の象徴とされます。そもそもヴィーナスは愛と美の女神ですから当然です。ちなみに男性の象徴は「Mars {m}:火星」の槍と盾 “♂” で戦いを表します。マルスは戦いと農耕の神です。農耕と言えば、漢字で田の力と書いて「男」を意味することと何か共通するものを感じます。

肉眼で見える衛星は男性名詞

  • Satellit {m}:衛星
  • Mond {m}:月;衛星
  • Phobos {m}:フォボス(火星の衛星)
  • Deimos {m}:ダイモス(火星の衛星)

火星の衛星と聞いて月のような球体をイメージすると幻滅します。大きな不格好な岩の塊(かたまり)です。肉眼では見えない木星から先の衛星は男性名詞か女性名詞になります。

恒星のほとんどは男性名詞

  • Sirius {m}:シリウス,おおいぬ座アルファ星
  • Canopus {m}:カノープス,りゅうこつ座アルファ星
  • Arktur {m}:アルクトゥルス,うしかい座アルファ星
  • Alpha Centauri {m}:ケンタウルス座アルファ星

例外:

  • Wega {f}:ベガ,ヴェガ,こと座アルファ星
  • Kapella {f}:カペラ,ぎょしゃ座アルファ星
  • Spica {f}:スピカ,おとめ座アルファ星

発見されている恒星はすべて88星座のいずれかに属します、そして恒星名は星座の中の星から、基本的に明るい順に、アルファ、ベータ、ガンマと名前が割り振られ、また明るい星には固有名が付けられていることがあります(例:Wega {f}:ベガ,こと座アルファ星)。しかし、明るい割には固有名がないものもあります(例:Alpha Centauri {m}:ケンタウルス座アルファ星、三重星であるため三位一体としての固有名がありません)。
調べた範囲では、上記の例外を除いてはすべて男性名詞でした。地球から見える恒星は文字通り、星の数ほどあります。その内、固有名の付いた星ですら数百程と言われている。コラム子が生きている内に調べ尽くせる範囲を超えています。
「Alpha Centauri {m}」のようにギリシャ語のアルファベット名の恒星は例外なく男性名詞になります。この例で言えば、ラテン語「Centaurus」の所有格「Centauri」から「ケンタウルス座のアルファ」、すなわち「アルファ番目の星(Stern {m})」という意味を含んでいるからです(「Alpha {n}」だけであれば中性名詞になったはずです)。

(この稿、続く)