コラム:医学用語

 歳も歳なので最近運動神経も落ちてきたようです。45年ぶりの大雪が降る。表にでなければよかったのですが仕事なので仕方がありません。歩道で見事に転んで左の腰、右の手首と肘を打ってしまいました。大した事はないと思っていたのですが、それから半日ほど経ち、箸が持てない程、右手が痛み出しました。近所の救命救急センターに駆けつけて当直医に診てもらった結果、右手親指の付け根に当たる大菱形骨という骨にヒビが入っていることがわかりました。
 早速、この骨のドイツ語訳を調べてみました:

  • großes Vieleckbein {n} ← 大菱形骨(ダイリョウケイコツ)

大があるなら小もあるはず、人差し指側の隣の骨がそれです

  • kleines Vieleckbein {n} ← 小菱形骨(ショウリョウケイコツ)

ちなみに以前にも手の骨を折っていたのですが、

  • Kahnbein {n} ← 舟状骨(シュウジョウコツ)

という骨、さらに若い頃にサッカーで折った骨は

  • Schlüsselbein {n} ← 鎖骨(サコツ)

その他の骨は次に骨折したときにコラムに書こうと思います(そのとき生きていれば)。

 以前のコラム「日本語化したドイツ語2」に、ギプス(Gips {m}:ギプス(石膏))について書いたが、今は石膏に替わる専用のテープがあり、巻き付けるだけで、あっと言う間に固まって「Gipsverband {m}:ギプス」ができ上がりました。何かの化学反応のため一瞬熱くなって、冷えると同時に硬化していきました。

 テープを巻いてもらっている間は暇だったので、カルテを見ながら先生を質問攻めにしました。

この「主訴」とはなんですか?
 読んで字のごとく、患者の訴える内容だそうです。カルテの一番上に書いてありました。先ずこの情報から始まります。そう言えば「右手の甲が痛い」と主訴したばかりでした。
 これも調べてみました:

  • Hauptbeschwerden {fpl}:主訴(シュソ)

あまりにもぴったりな訳語なので、ドイツ語が語源でしょうか。

「所見」と「診断」の違いは何ですか?
 「所見」とは簡単に言えば診察の結果で、「診断」はその「所見」を元にした病状の判断だそうです。「例えば貴方の場合は、このモニター上のレントゲンとCT画像が所見(画像所見と言うそう)、右手何々骨骨折が診断」と聴いて納得がいきました。

これらの単語も、もちろん調べてみました:

  • Befund {m}/Befundung {f}:所見,診断
  • Diagnose {f}:診断

 ところで所見には、体温、血圧、脈数など別に医者の判断を必要としない簡単なものから、病名、幹部の見極めなど医者が判断する専門的なものまであります。後者の意味では診断と区別がつきにくいもどです。

次にテープのことを訊いたら、別の人のカルテを観ていることに気が付いた。過去の「病歴:Krankengeschichte {f}」が自分のそれと違うからだ。
「先生、内容は観ていません(観ていたから気が付いたのだが)」とあわてて付け加えた。先生が今、パソコンで書いているカルテが自分のカルテ、すでに印刷されて机にあるはずもなかった。

骨折の話題から広がり過ぎた感があるが、上に書いた「体温、血圧、脈数」などをバイタルと言って医者が患者から最初に知る生体情報だそうだ。

  • Vitalparameter {mpl}:バイタルサイン,バイタル

具体的には

  • Herzfrequenz {f}:心拍数,脈拍数
  • Blutdruck {m}:血圧
  • Körpertemperatur {f}:体温
  • Atemfrequenz {f}:呼吸数,呼吸

などを示す。今回の骨折の際にも、呼吸数を除いてすべて測った。一般に呼吸数は患者に気付かれないように測るそうだ。案外、目測でカウントされていたのかも知れない。

以上、左手で何とか書き上げた。