コラム:変なドイツ語 3

 「変なドイツ語」という題名からだんだん離れて行く感があります。とにかく何でもありで良いではないですか。

  • Schutzgebühr {f}:名目的手数料
  • 利潤を目的としない価格です。例えば、宣伝用にパンフレット、カタログなどを少量の部数作って、売るつもりもなく店頭や然るべき場所に置いたとします。しかし無料にすると、読まない人にも気安く持って行かれてしまうかも知れません。そこで小銭で足りる程の販売価格を付けます。これによって、持って行くのは能動的に読みたい人に絞られます。この価格が「Schutzgebühr」です。興味の無い人から守って(schützen)くれる価格(Gebühr)ですから言い得て妙では。
  • Mechanik {f}:力学
  • は適訳と思います。その他、「機械仕掛け」「機構」などの意味もあって日本の独和辞典にもそう訳されています。問題は、そこに付記されている「機械工学」や「機械学」という訳語です。「Mechanik」にそんな意味はありません。
  • コラム子の知る限り、これは半世紀前の日本の独和辞典にすでに載っていた誤訳で、未だに訂正されていません。一部の出版社にはその旨の手紙を送ってはいるのですが。
  • und/oder:または
  • 先ず読み方:スラッシュ「/」は読まず「oder」の「o」にアクセントを付けます。
  • 法律の条文、学術論文、契約書、特許の明細書などいわゆる硬い文章に多く出現します。特許翻訳では決まった訳し方があります。A und/oder B:「A と B の両方、またはそのいずれか一方」「A・B の少なくとも一方」。柔らかい文書のときは「A または B」と訳してよいと思います。日本語の「または」は本来、少なくとも一方という意味で両方を含むからです。その旨の但し書きは必要かも知れません。「もしくは」と「あるいは」はいずれか一方で両方を含まないので注意が必要です。
  • ちなみに数理論理学では論理和 A∨B と簡単に書けます。英語では「and/or」ですが、同じ意味かどうかわかりません。
  • 最後に例文:
  •  Zur Herstellung von Frikadelle nimmt man gewöhnlich Hackfleisch aus Rind und/oder Schwein.
  •  ハンバーグには普通、牛か豚の挽き肉または合い挽き肉を使います。
  • entfällt:該当せず
  • 定型書式(Formular)を記入する機会はたびたびあるでしょう。記入欄に自分とは関係ない項目があったときに「entfällt」と書きます。空欄にしておいてもよいのですが、記入漏れではないことを明確にできます。

(この稿、続く)