名詞の性の見分け方 31(中性名詞)

 30稿を超えた「名詞の性~」もそろそろ終わりです。

元素名の大部分は中性名詞

「Periodentabelle {f}:周期律表」に載っている元素の大部分は中性名詞です。なんとこれから発見される元素も含めて中性名詞であることが決まっています。実際には人が創るのですが発見と表現します。一般にこれらは放射能を持つので「人工放射性元素」と呼ばれています。発見と言いながら「人工」とは、訳が分かりません。

 人工の元素は発見されるとその原子番号を元に暫定的な名前が付けられ、正式に認定されると正式名が与えられます。暫定名も正式名もラテン語の中性名詞の語尾「-ium」で終わるのでドイツ語でも中性名詞になります。

 なんでも IUPAC命名法という勧告が元になっているそうです。以前、「-ium」を金属の語尾と紹介しましたが、新発見された元素は金属でなくても、このIUPAC命名法によれば「-ium」で終わります。

 IUPAC命名法が無かった時代、金属でもない「Helium {n}:ヘリウム」に金属の語尾を付けたのは発見した人が金属であると誤解したとか、しないとか。金属語尾の規則の方がIUPAC命名法より古かったようです。

 本題の中性名詞の元素は、まず非金属から:

  • Argon {n}:アルゴン
  • Fluor {n}:フッ素
  • Chlor {n}:塩素
  • Neon {n}:ネオン

ちなみに「-on」は希ガス(昔、抽出が困難で希だったから)の語尾です。
非金属の例外は2語のみです。

  • Phosphor {m}:燐(りん)
  • Schwefel {m}:硫黄

下記の例は Stoff {m} が男性名詞なので自ずと男性名詞になります。例外は上記の2例を覚えておけば事足ります。

  • Kohlenstoff {m}:炭素
  • Sauerstoff {m}:酸素
  • Stickstoff {m}:窒素
  • Wasserstoff {m}:水素

しかし、燐(りん)を除き、それぞれに外来語があります。日本で炭素をカーボン(carbon)と呼ぶようなものです。そのすべてが中性名詞です。

  • Sulfur {n}:硫黄
  • Carbon {n}:炭素
  • Oxygen {n}:酸素
  • Nitrogen {n}:窒素
  • Hydrogen {n}:水素

残りの金属元素(純金属)は例外なく中性名詞です。我々になじみの深い金属が金属の語尾「-ium」を持たないのも皮肉なものです。

  • Gold {n}:金
  • Silber {n}:銀
  • Kupfer {n}:銅
  • Platin {n}:プラチナ
  • Eisen {n}:鉄(光沢が「Eis {n}:氷」に似ていることから)
  • Aluminium {n}:アルミニウム

ここで金属は中性名詞と早合点してはいけません純金属だけです、合金はその限りではありません。

  • Stahl {m}:鋼,スチール(鉄を主体とした炭素合金)
  • Ferrit {m}:フェライト(鉄を主体とした炭素合金)
  • Bronze {f}:青銅,ブロンズ(銅を主体としたスズ合金)

以上をまとめると、炭素、酸素、窒素、水素、燐(りん)、硫黄(いおう)は男性名詞、それ以外の元素名は中性名詞です。この男性名詞群で何かを思い出しませんか。そう、植物の「notwendige Nährstoffe {mpl}:必須栄養素」です。しかし3大栄養素のひとつ「Kalium {n}:カリウム」が抜けているのでこれは偶然でしょう。

注:化学に詳しい方に指摘される前に:炭素は水溶液が電解質であることで金属の性質を有していますが、その他の性質から周期律表では非金属と分類されています。

(この稿、続く)