名詞の性の見分け方 32(中性名詞)

医薬品名の大部分は中性名詞

内用薬、外用薬、注射薬の薬効成分の名称です。薬効成分にも「化学名」「一般名」「商品名」があるそうです。商品名とはそれを開発した会社が付けたもの、一般名とは薬剤師が使う、文字通り一般的な名称で、商品名を継承することもあります。
特に一般名の語尾には「-säure {f}:~酸」、「-ase {f}:(酵素の語尾)」「-ose {f}:(糖類の語尾)」「-alkohol {m}:~アルコール」「-ester {m}:~エステル」「-zucker {m}:~糖」を使うことがあり、中性名詞にはなりません。
例:

  • Ascorbinsäure {f}:アスコルビン酸(ビタミンC)
  • Amylase {f}:アミラーゼ(ジアスターゼ)
  • Maltose {f}:マルトース(麦芽糖)
  • Pantothenalkohol {m}:パントテニルアルコール
  • Borsäuretriester {m}:ホウ酸エステル
  • Traubenzucker {m}:ブドウ糖(「Glukose {f}:グルコース」とも)

例外を先に挙げた後の残りは中性名詞です。化学名とは薬の化学式をそのまま薬の名称にしたもので、文章をそのまま名詞にすると中性名詞になるように、化学名も語尾に依らず中性名詞になります。例えば、アスコルビン酸の化学名は次のような中性名詞です:
(5R)-5-[(1S)-1,2-Dihydroxyethyl]-3,4-dihydroxy-5-hydrofuran-2-on {n}:
(5R)-5-((S)-1,2-ジヒドロキシエチル)-3,4-ジヒドロキシ-5-ヒドロフラン-2-オン
化学構造式も名詞として使うならば中性名詞です:
C6H8O6 {n}:(アスコルビン酸の化学構造式)
ともあれ、ドイツで「Apotheker {m}:薬剤師」になるのでなければ実生活では必要のない知識ですが。

それでは、我々が実生活で耳にする薬は:

  • Aspirin {n}:アスピリン(商品名・一般名とも)
  • Glutamin {n}:グルタミン
  • Morphium {n}:モルヒネ(オランダ語、通性(両性)名詞の「morphine」から)
  • Taurin {n}:タウリン
  • Viagra {n}:バイアグラ(商品名、一般名は「Sildenafil {n}:シルデナフィル」)
  • Vitamin {n}:ビタミン(栄養素)

いずれも中性名詞です。逆に、実生活ではあまり耳にすることのない薬は:

  • Amitriptylin:アミトリプチリン
  • Atenolol {n}:アテノロール
  • Captopril {n}:カプトプリル
  • Celecoxib {n}:セレコキシブ
  • Ibuprofen {n}:イブプロフェン
  • Imatinib {n}:イマチニブ
  • Imipramin {n}:イミプラミン
  • Infliximab {n}:インフリキシマブ
  • Labetalol {n}:ラベタロール
  • Nifedipin {n}:ニフェジピン
  • Oxacillin {n}:オキサシリン
  • Paroxetin {n}:パロキセチン
  • Penizillin {n}:ペニシリン
  • Simvastatin {n}:シンバスタチン
  • Valsartan {n}:バルサルタン

これらもまた中性名詞です。さすがにペニシリンくらい知っていますが、残りはチンプンカンプンです。

(この稿、続く)