コラム:変なドイツ語 7

これまでは毎回4つ程の「変なドイツ語」の単語や構文を載せていましたが、今回は1つだけです。

  • b,h: (それぞれ)変ロ音,ロ音
  • 音楽の話です。日本では階名は「ド レ ミ ファ ソ ラ シ」で音名は「ハ ニ ホ ヘ ト イ ロ」と言います(階名と音名の意味はググッてください)。コード(和音)のキーなどを表すときに
  •   c d e f g a b
  •  (ハ ニ ホ ヘ ト イ ロ)
  • とアルファベットを音名表記に使うこともあります。ところがドイツでは階名・音名ともに
  •   c d e f g a h
  • であって、「do re mi」は使われません。だからサウンド・オブ・ミュージックのドレミの歌のドイツ語バージョンも、
  •   c wie Cellophanpapier,~: Cはセロファン紙の様 、~
  • とアルファベットで歌われています(Do-Re-Mi 独訳版も存在します)。
  • 問題は「ロ音(ハ長調のシ)」です、上記の様に日本では「b」、ドイツでは「h」となっています。ドイツで「b」と書くと半音下がった「変ロ音」を表します。古い時代(恐らく「Bach:バッハ」以前)、ロ音が半音下がった
  •   c d e f g a b
  •  (ハ ニ ホ ヘ ト イ 変ロ)
  • がドイツ音階だったからです。アルファベットの「b」を「変ロ音」に使用済みだったので、現在の「ロ音」を表すため別のアルファベット「h」を充てて
  •   c d e f g a h
  •  (ハ ニ ホ ヘ ト イ ロ)
  • としたわけです。
  • ここまでは音楽を学んでいる人には常識でしょう。ではなぜ「h」というアルファベットを使ったのでしょうか。これは音大卒の人でも知らないのでは。
  • 二つ有力な説があるそうです:
  • ① 変ロ音に対してロ音の方が「hart:硬い」音に聞こえたから、
  •   その頭文字「h」を使った
  • ② 変ロ音に「b」、ロ音に「髭文字のb」を使っていて
  •   それが「h」に見えたため、「h」と書くのが定着した
  • 個人的には、芸大のある学生(当時)が調べてくれた①の説を推します。
  • もっとも、アルファベットの「a」から「g」までを使い切ってしまえば、次に来る「h」を使うのも自然な流れですが。
  • ちなみに「h」はドレミの歌で
  •   h wie Hagebuttentee,~: Hはローズヒップティーの様、~
  • ペギー葉山さん訳詩の日本語バージョンでは
  •   シは幸せよ
  • でしたっけ。

(この稿、続く)