字義訳に注意(続)

前コラムで

欧米では、ライスは野菜だそうです

などに関してウンチクを傾けましたが、誤解が無いように追加説明します。
「欧米では、ライスは野菜」ということを否定しているのではありません。欧米では広すぎるのでドイツに限れば、このフレーズのコピーライターは

In Deutschland ist Reis ein Gemüse.

ということを言いたかったのでしょう。このフレーズを和訳せよと言われたら「ドイツではライスは野菜」となるでしょう。「野菜」以外の単語を思い付きません。ただ「Gemüse ≡ 野菜」と直結的に訳語を扱って欲しくないのです。

「Goethe-Institut」のかつての恩師が、辞典を引くな、と口を酸っぱくして言っていました。例えば、「Gemüse」を独和辞典で引けば「野菜」と訳されています。そうすると日本語の野菜のイメージが頭に浮かび、やがて記憶に定着します。これを辞典を引かずに「Gemüse」が意味するものをイメージして記憶すれば「Gemüse ≠ 野菜」の部分を知らずに済みます。
もちろん辞書は引く必要はあります。そうでなければ先人達と同じ苦労をすることになります。ある英和辞典で「eat」を引くと、「食べる」の他に「(スープ)を吸う」とあります。ちゃんと英語でイメージしやすいように配慮されています。辞典は正しく引きましょう。くれぐれも、

なぜ英語ではスープを食べると言うのか

などと他人(ひと)に講釈しないでください。