Marmelade!

ドイツの「Witz:ジョーク」を一席:
 ある口の大きな女性がいました。妹が「写真を撮られるときには、『Konfitüre!』と言って、少しでも口が小さく写るようにしたらいい」とアドバイスをくれました。それからしばらくして彼女、実際に友人に写真を撮ってもらうことになりました。さっそく妹に言われたことを試そうとしたのですが、その肝心の魔法の言葉が思い出せません。「あっ、そうだ」とひらめいて、シャッターが切られる瞬間に彼女の口から出た言葉は、「Marmelade!」でした。

 「ジョークを解説するのはカエルの解剖と同じ」と言った人がいます。その心は「中身が分かってもジョークもカエルも死ぬ」ということだそうです。でも解説しちゃいます:チーズと言えば笑顔に写るのと同様に「Konfitüre:ジャム」と言えば口が小さく写るはずのところ、間違えて「Marmelade:ジャム」と言ってしまったために逆に口を大きく見せてしまった、という落ちです。

 ここで「Marmelade」を日本で言うオレンジマーマレードと思ってしまうと、落ちが読めません。ドイツ語の「Marmelade」は「Konfitüre」とほぼ同じ意味です。その違いは知る限り二つあります。「Konfitüre」は必ず一種類の果物から作ることと、ドイツ以外の欧州では「Marmelade」はオレンジなどの柑橘類を材料とするものを指すことです。これは欧州共同体の法規でそう定められているからです。そのため、ドイツでも輸出用の「Mandarinenmarmelade」「Orangenkonfitüre」は「Marmalade(英国向け)」などと輸入国に合わせてラベルの表示を変えています。

 ジョークが完全に死んだところで、ジャムに関するウンチクをもう少し続けます。日本語の「ジャム」と「マーマレード」と同様に英語の「jam」という言葉は「marmalade」を含んでいません。これは柑橘類のために予約されています。不思議なことに「marmalade」はポルトガル語で「marmelo:マルメーロ」と言う柑橘類ではない果実(日本語では「マルメロ」)から作ったジャム「marmelada:マルメラーダ」に由来するそうで、柑橘類を材料とするのはどうやら後付けのレシピの様です。