ウムラウト その1

 特に期待はされていないでしょうが、以前の稿でお約束していた通りウムラウト(Umlaut〔 ¨ 〕)について書きます。これまで取り上げなかったのは、いささか自信がなかったからです。これを読んでいる方々がドイツ語初心者のみであることを願い、意を決してウムラウトの発音を説明するという無謀な挑戦をしてみます。

 自信がないながらも、ウムラウトについて何度か日本の人に発音を注意したり、偉そうに講釈したことがありました。その少ない経験から言うのですが、
日本のドイツ語初心者はウムラウトについて無頓着過ぎます。 ウムラウトの発音はドイツ語を学ぶ者にとって避けることのできない道と思うのですが。

 一例を挙げれば、NHKのTVドイツ語講座をテキストまで買って受講しましたが、ある女性キャスター(もちろん初心者)は半年の全放映期間中いい加減なウムラウトの発音で通しました。

 いっぺんにすべてのウムラウトの発音を説明しても混乱すると思います。3つのウムラウトを3回に分けて投稿することにします。習得のコツは難しく考えないこと、勝手に作った間違った発音を覚えないことの二つです。

「Ä ä:アー・ウムラウト」
  最も簡単なウムラウトです。「A a」は口の形、「¨」は「e」の発音を表します。これは他のウムラウトにも当てはまる原則です。日本語的に書けば「ア」の口をして「エ」と発音します。必然的に日本語の「エ」と同じになります。単純明快でしょう。まず短母音では「E e」と区別できません。複母音1)異なる母音二語を結合したものも同様です。「Äu 」「äu」があって「オイ」と読みます。これも「Eu 」「eu」と区別できません。

 忘れないうちに練習問題として例を挙げます。名詞、動詞、形容詞、副詞、語頭にあるもの、語中にあるものなど散りばめました:
 短母音:
        Äquator {m}: 赤道
   ändern {vt}: 変える
   ärgerlich {adj}: 腹の立つ
   Hände {fpl}: 手
   blättern {vi}: ページをめくる
   ständig {adj/adv}: 永続の
 複母音:
   Äußeres {n}: エクステリア
   äußern {vt}: 言い表す
   äußere {adj}: 外の
   Fräulein {n}: 娘さん、~嬢
   täuschen {vt/vi}: あざむく
   vorläufig {adj/adv}: 前提的な;前もって

 次に長母音も日本語の「エー」と同じです。「エー」と驚くように声に出してください。それが長母音のアー・ウムラウトです。
 長母音の例:
  Äther {m}:エーテル
  ähneln {vi}: 似ている
  ähnlich {adj}: 似ている
  Mädchen {n}: 少女(メーテゥヒェンと読みます)
  sägen {vt/vi}: 鋸を引く
  näher {adj/adv}: より近い

 それでは当然疑問が生れます。「E e:エー」とはどう違うのでしょうか。実はこっちの方が我々日本人には難しいのです。こちらは唇の両端をつり上げて発音します。「Leben」など、カナ表記では「レーベン」ですが、これをそのまま読むと「Läben」と聞こえてしまいます。唇の両端をつり上げて発音します、「lieben」ならない程に。蛇足ですが形容詞「lebendig」の「e」は短母音になって「レベンディッヒ」になるので注意が必要です。

 日本人は残りの「Ö ö:オー・ウムラウト」「Ü ü:ウー・ウムラウト」の発音だけ覚えれば良いのです。それは次回に。

(この稿、続く)


References   [ + ]

1. 異なる母音二語を結合したもの