有限回転問題 3.3.2

 有限回転の公式として有名なロドリゲスの回転公式を説明します.実はこれ,日本のロケットの姿勢制御のソフトウェアに使われています.なぜそんなことを知っているかって? そのソフトウェアの開発メンバーだった人から直接聴いたからです.JAXAの人ではありません.

 この回転公式が使うデータはジャイロスコープという回転角を計測する装置から得られます.加速度を積分するという原理のため,これにはドリフトという有害な特性があります.時計回りまたは反時計回りに計測値がじわじわずれて行く現象です.長く放っておけば数度という誤差を生みます.ロケットにはレーザーを使った超高性能のジャイロスコープが載っていまが,やはりドリフトは避けることはできません.

 ロケットの姿勢制御ソフトウェアはこれをどう克服しているのか疑問だったのですが.答えは簡単でした.ロケットが成層圏に達するまでは10分位だそうですが,その間のドリフトなど微々たるものです.特にジャイロスコープに精度が要求されるのはその前半の数分間だけだそうです.ドリフトが発生するまでに使い終わってしまいます.もちろん宇宙航行にもジャイロは使われますが,地球の1Gの加速度を背負いながらさらに数Gの加速度で加速する瞬間は打ち上げ時のみです.

 スーパーカーが買える程の高価なジャイロスコープも本領発揮できる寿命わずか10分足らずの使い捨てとは恐れ入ります.

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