ウムラウト その3

 「Ü ü:ウー・ウムラウト」の発音です。繰り返しますが「U u」は口の形「¨」は「E e」の発音を表します。オー・ウムラウトより下あごはあまり下げず、いっそう口をとんがらせます。それが日本人の誰もが知っている「ウ」の口です。後は「エ」と言うだけです。

  このウムラウトを使った単語は何とかカナ書きできます。だからこそ間違いやすいとも言えます。カナ書きのような発音で通しても、聞き手は文章の意味を流れで理解するので使えはします。しかしそれに頼ってカナ書きの発音で通すのは無精と言うものです。そこで意地悪して、カナ書きでは通じない単語を挙げて行きます。

 あえてカナ書きしますが、そのまま読まないでください。このウムラウトの発音で注意すべきことは二音にならないことです。そう聞こえてしまうのは仕方がないのですが一音を意識します。具体的に説明します。まず短母音から

Hütte {f}: 小屋; ヒュッテ(日本の登山用語で山小屋の意味)
  「ュ」は発音しません。 「Hü」を「フ」と書けるとすると「フッテ」です。カナに誘導されて「Fütte」にならないように。口笛を吹いてはいけません。

üppig {adj}: うっそう(鬱蒼)とした
  「ユッピッヒ」では通じません。「ウッピッヒ」の口で「ユッピッヒ」と発音します。
 ちなみに語頭に短母音のウー・ウムラウトがあるのは純粋なドイツ語ではこの単語だけでしょう。あえて名詞化すると「Üppigkeit {f}」、外来語も加えれば中国の都市「Ürümqi (n): 烏魯木齊(ウルムチ)」もあります。ただウルムチはウルムチで通じるはずです。これ自体、ドイツ語のアルファベットで無理に表現したものなので。

kürzen {vt}: 短くする;要約する
  くどいようですが「キュルツェン」ではなく、「kü」を「ク」と発音できるとすると「クルツェン」です。

fünf {num}: 5 「ヒュンフ」
 私感ですが難しさのランクで言えば、5段階評価でも「5」でしょう。「ュ」を発音するなというのも無理な話です。要点はこれまでのと一緒です。

 次は長母音です。短母音でも二音になりやすいのですから、長母音でも短二音にならずウムラウト一音を伸ばすことをいっそう意識します。

Übung {f}: 練習、演習
 音楽家、特に声楽家ならば必ず持っている「Chorübungen」というコーラス(Chor {m})の練習曲集があります。もっぱら楽譜を読むための教科書として使われています。日本語の訳本には「コールユーブンゲン」とルビが振ってありますが、ほとんどの日本の音楽家は「コーリューブンゲン」と読みます。分綴は「Chor-übungen」ですから「コーア・ユーブンゲン」です。「ユゥブンゲン」のように短二音ではなく、「ü」を「ユ」と書けると仮定すれば「ユーブンゲン」のように長一音です。

süß: 甘い;可愛い
  カナ表記では「ジュース」でしょうか、しかし英語の「juice」とは違います。「sü」を「ジ」と書けると仮定すれば「ジース」です。

 ウムラウトは三つのはずなのに、なぜかもう一つ稿が続きます。

(この稿続く)