はるか昔、就活をしていた頃、父に元軍人のN氏を紹介されました。先の戦争中にドイツ語の通訳をされていた方です。流暢なドイツ語を披露してくれたのですが、そのときの発音が今も耳に残っています。「イール ファーテル:ihr Vater」「ウール:Uhr」など、典型的な巻き舌Rでした。戦前は「R」をそう発音するように指導されていたからでしょうか。
英語と違ってドイツ語では巻き舌Rは使われてはいますが、せいぜい大声を出すときやリートを歌うときでしょう。と言うことは、普通の会話で巻き舌Rを使っている限り、聞くドイツ語と話すドイツ語が違うということになります。これでは言語中枢が混乱してしまいます。
N氏のドイツ語は個人的にはネイティブに聞こえました。その「R」の発音を武器(?)にして通訳を全うできた訳ですし、これもアリかなとは思います。ただそれはベテラン通訳だから許されることです。
批判を受けることを覚悟で言いますが、日本人は「R」と「L」の発音の違いに無頓着すぎるのではないでしょうか。例えば、TVやラジオのコマーシャルの「Nescafe Gold Blend」は「~ Brend」に、「Speed Learning」は「~ Rearning」に聞こえます。コーヒーはさておいて、語学教材のスポンサーからコマーシャルの制作会社にクレームは来ないのでしょうか。
カタカナで書くような外来語は既に日本語なので、どう発音しようと日本人の勝手ですが、横文字を読むときぐらいは「R」と「L」を使い分けしませんか。発音が似ているからと言って同じではありません、別のアルファベットです。
「R」と「L」の発音については、ネットにいくらでもアップされているので、ここであえて重複するつもりはありません。これからドイツ語を学ぶ人は、それらを見て練習してください。
そこで練習の成果を試してみます。「Lorelei:ローレライ」と言ってみてください。この「re」は巻き舌では表現できません。我流ですが、そんなときは思い切って「r」を省くつもりで「ローエライ(労偉い)」のように発音します。人は、そこに懸壅垂(けんようすい)のRを補って聞くはずです。ただアクセントは語尾の「lei」にあることに注意してください。(恥をさらしたまま、訂正します「Lo」にアクセントでも良いそうです)
これは姑息でしょうか、もちろんそのとおりです。良い子は真似してはいけません。しかし「der」を当たり前のように「デア」と発音するのも姑息ではないですか。
(この稿続く)