意味によって男性名詞になったり中世名詞になったりする名詞を挙げます。
「Teil」「~teil」という名詞の性です。自分でもあやふやな知識をひけらかすのは気が引けるのですが、当のドイツ語圏の人たちでさえもこの名詞の性別に苦労していると聞きます。この名詞を考えるきっかけになればと思い、あえて書きます。
和訳すると、一部、部分、など「部」という漢字を使うことが多いようです。辞書に載っている「-teil」で終わる単語は辞書に性別が載っていますが、「Teil」単独、形容詞+「Teil」の場合は自分でそれを判断しなければなりません。その規則性はこれから挙げる「-teil」で終わる名詞の性を参考にすれば、ある程度見えてきます。
男性名詞 「~teil」:
- 全体が見えていてその部分、何々の中の、内の何々
- 対義語、対比できるモノや人があってその一方、一面、側
- 訳語に「率」「比」などの漢字がある
まずはまとめて2例:
- Anteil {m}: 分け前
- 分数やパーセンテージで表せます。それは全体 100% が見えるからです。
- Bestandteil {m}: 構成成分
- 何かの成分です。その何かが全体です。
これら2単語は「der ~teil」の代表です。どちらかの意味にとれる名詞は男性名詞と判断してもよいとすら思います。
- Nachteil {m}:短所,欠点,不利
- Vorteil {m}:長所,美点,有利
- 人、モノ、行為には短所や欠点があって長所や美点があり、また不利があって有利がありますから、互いに対義の一方に当たります。
- Erdteil {m}:大陸
- 「Erde {f}:地球」全体の内、「Erde {f}:地面,大地」の部分という意味です。同じ Erde でも意味が違います。一般に「Erd~」で始まる複合語は地面や大地の意味になる方が多いと思います。
- もちろん「Ozeanteil {m}:大洋(海洋)部分」と対義の関係にあります。ただ「~teil」を使うより「Kontinente {mpl} und Ozeane {mpl}:大陸と海洋」とした方が美しい表現でしょう。
- Fehleranteil {m}: 不良率
- 訳語に漢字「率」があります。
- Erbteil {n}{m}:相続分
- 遺産全体の一部分ですから男性名詞のはずですが、中性名詞として使われることの方が多いようです。法律家は意図的に男性名詞として扱うそうです。我々外国人は男性名詞と覚えましょう。
同じ理由で男性名詞になる単語はまだあります:
- Elternteil {m}: (両親の内の)父親または母親
- Geschwisterteil {m}: (兄弟姉妹の内の)兄,弟,姉,妹
- Körperteil {m}: (身体の内の)肢体(したい);内臓
- Realteil {m}: (複素数の内の)実数部
- Imaginärteil {m}: (複素数の内の)虚数部
- Mantissenteil {m}: (浮動小数点数の内の)仮数部
- Exponententeil {m}: (浮動小数点数の内の)指数部
- Ganzzahlteil {m}: (実数の)整数部(小数点の前)
- Dezimalteil {m}: (実数の)小数部(小数点の後)
以下、例外です。これまでの説明が正しければ男性名詞のはずですが、中性名詞として使われることも多いようです。
- Unterteil {m}/{n}: 下部,底部
- Oberteil {m}/{n}: 上部
- Vorderteil {m}/{n}: 前部
- Hinterteil {n}: 尻;後部(稀)
- この単語だけ男性名詞としては使われません。ドイツの辞書には「hinterer Körperteil」と男性名詞を使って説明してあります。
- 男性名詞として認識されていながらしつこく中性名詞ということでしょうか
- Innenteil {m}/{n}: 内部,中心部
- 内部という意味では男性か中性名詞のどちらか、核、コアの意味では中性名詞と理解しています。
男性名詞 「Teil」:
これまでの例を参考にすると、単独の「Teil」で男性名詞になるものが分かります。
- der klagende Teil: 原告側
- der angeklagte Teil: 被告側
- 訴訟には原告と被告があり、それぞれ対義の関係にありますから男性名詞です。ここで「側」とは原告人または被告人の個人の場合ととそれに弁護士、検事を加えたグループの場合があります。
- DIN 3834 Teil 1 {m}: DIN 3834-その1
- DIN(ディン)とは「Deutsche Industrie-Normen:ドイツ工業規格」の略称です。規格は内容が多いと「Teil 1」「Teil 2」の様にいくつかの部に分かれることがあります。その場合、全体がその番号の規格なので男性名詞です。
- ちなみに日本工業規格の書き方にならって「その1」「その2」と訳します。
- erster Teil von “Star Wars”: スター・ウォーズの第一部
- これに限らず、「erst」「zweit」「dritt」など序数が付く「Teil」は一般に男性名詞です。
- ただこれだけではスター・ウォーズの第一作目か、時系列で最初の物語か分かりません。前者の意味で「新たなる希望」、後者の意味で「ファントム・メナス」でしょうか。(いつも通り脱線しました)
紙面(画面?)の関係で中性名詞になる「Teil」「~teil」については次稿に渡します。
(この稿、続く)