「コラム:変なドイツ語 1」の続編です。そこで述べたように、日本語への誤訳も含みます。何かの訳に立てば良いのですが、必ずしもそれを目的としていません。
- Dings {n}:(思い出せない)何とか,何か,アレ,何某(ナニガシ),ヤツ,アソコ
- 日本語では、モノを表せば「アレ」、人を表せば「何某」、モノと人の両方に使えるのが「ヤツ」でしょうか。思い出せないモノや人、言いにくいモノを指します。例えば、ある人の名前をど忘れしたときには、「Herr Dings」「Frau Dings」と仮に言って思い出すまでの時をしのいだりします。
- Man {n}:世人
- Mann {m} ではなく、語尾の「n」は1つです、それに中性名詞です。ドイツの哲学者ハイデッガーの造語で、和訳しないでダス・マン(das Man)とも言います。
- 不定代名詞「man」については説明するまでもないでしょう。例えば
- Wie sagt man “danke” auf Japanisch?:日本語で「danke」は何と言うの?
- という文章の中の「man」は特定の人ではなく「世間一般の人」を表しています。この「man」の意味をそのままに名詞化したものが「Man」です。不定代名詞は三人称単数扱いですから複数形は無いのですが、単数形の与格と目的格は何と言うのでしょうか?もっともそんなこと知らなくても困らないのですが。
- toi toi toi!:がんばって ← 鬼は外
- 訳に事欠いて本来の意味から遠ざかったかもしれません。日本には、火打石でカチカチする切火(きりび)という魔除けの風習がありますが、ドイツでは三回つばを吐くのだそうです。さすがに本当につばを吐くの無作法ということでしょうか、それを擬音に代えたものです。悪霊を払うから「がんばってね」ということです。日本の擬音ではきっと「ぺッ、ぺッ、ぺッ」に当たります。いえ切火ならば「カチ、カチ、カチ」ですね
- unberufen:くわばら、くわばら
- 「(悪霊は)お呼びでない」という意味から何か悪いことが続いたりしたら唱えるおまじないです。学校の試験の前やスポーツの試合の前などで、誰かに「toi toi toi!」と言われたら、「大丈夫、呼んでいません」という意味で「unberufen.」と応えたりもできます。
(この稿、続く)