ドイツ語の辞典には載っていないか、載っていてもその意味を伝えきれていない単語やフレーズ(Redensart)のいくつか紹介します(別に語学辞典の批判を目的としていません、百科事典ではないので「伝えきれていない」のは当然です)。誤訳のため、結果的に変なドイツ語になっている単語やフレーズも含みます。
- Lebe wohl!: さようなら ← お健やかにお過ごしください
- 今更でもないのですが、もう会えない人に対してか、会えないことを意識してお別れするときの表現です。お別れには「Auf Wiedersehen!」もあります。字義どおりに訳せば「再会を期して」でしょうか。こちらは逆にまた会える人に対してか、そうでない人にも儀礼的に使います。バイエルン州など南ドイツでは「Auf Wiederschauen!」になります。電話やラジオでは対面していないので「Auf Wiederhören!」と言います。
- うっかり話がそれてしまいました。趣旨は名詞の「Lebewohl {n}」と勘違いしないで欲しいということです。これは現代ドイツ語では「別れのあいさつ」をすることであって、「別れのあいさつ」ではありません(日本でも別れ際に「別離!」「告別!」とは言いませんよね)。音声で両者を区別できませんが、「Lebe wohl!」は命令文なので、相手が二人以上の場合には「Lebt wohl!」、相手によっては「Leben Sie wohl!」と使い分けが必要です。
- Kiki {m}:不要物、たわごと
- 外来語でもないらしい、また由来もわかりませんが、紛れもなくドイツ語です。例えば、このコラムに対して「So einen Kiki!:そんなたわごとを!」などと言って頂いてもかまいません。
- 日本のアニメ「魔女の宅急便(Kikis kleiner Lieferservice)」の主人公の魔女が「Kiki」という名前でしたが、この単語とは無関係です。このアニメのモデルとなった都市はドイツの町ではないそうです。それでも「Kiki」だけはドイツ女性の名前です。
- ところで魔女がKikiのように愛らしい少女の姿で物語に登場するのは日本だけのようです
- capito?:わかった?
- と訊かれ、わかっていたら「capito.」と答え、全くわかっていなかったら「nix capito.」などと答えます。本来、ドイツ語ならば「Verstanden?」ですが、「capito?」の方を使うことも少なくありません。由来はイタリア語「Hai capito?(アイ カピート)」らしいのですが、イタリアでは話に念を押すようで失礼な表現になるそうです。
- Macker {m}: 友達,ボーイフレンド
- との本来の意味から転じて、「○○-macker」とすれば「○○組」の意味になり「○○」にその組の大将や主(ぬし)の名前がきます。子どもが遊びで使ったりもします。「小泉チルドレン」という言葉がありましたが、さしずめ「Koizumi-macker」になるでしょうか。こんな説明で「capito」?
(この稿、続く)