中性の名詞については折に触れて、特に他の性の名詞の例外として書いてきました。復習しておきます:
- Mädchen {n}:女の子
- など、語尾が「-chen」「-lein」「-el」「-le」「-erl」「-ndl」の縮小名詞
- Kind {n}:子ども,Kalb {n}:子牛
- など、人間や動物の子供
- Doping {n}:ドーピング
- など、英語の動名詞「-ing」に由来する名詞
- Viertel {n}:四分の一(1/4)
- など、「-tel」で終わる分数(分子が1で分母が自然数)
- Googol {n}:グーゴル,1.E+100
- など、巨大数の一部
- Hundert {n}:百(の単位),Tausend {n}:千(の単位)
- など、まとまった数
動詞不定形を名詞化したものは中性名詞
- Kochen {n}:料理
- Schweißen {n}:溶接
- Zeichen {n}:印;図面
- Jodeln {n}:ヨーデルを歌うこと
例外:
- Husten {m}:咳
- Packen {m}:包み;堆積(タイセキ),山(洗濯物などの)
ただし
- Husten {n}:咳をすること
- Packen {n}:「packen」すること
要は動詞から「~すること」という意味の名詞を作れば中性名詞になります。この例として、ある文法書にこんな単語がありました:
- Aufsichselbstangewiesensein {n}:自分以外に頼るものがないこと
こうなると動詞というより文章ですが、最後の「~sein」が名詞で、その前の「Aufsich~」がそれを修飾しています。全体で名詞です。
他の品詞を(無変化で)名詞化したものは中性名詞
動詞に限らず、形容詞、接続詞、副詞など他の品詞を名詞化すると中性名詞になります。動詞の名詞化と同様に名詞であることを示すために頭文字は大文字です。
- Nein {n}:否定,拒否 ← nein:いいえ(副詞)
- Jetzt {n}:現今 ← jetzt:今(副詞)
- Plus {n}:正数,正数記号 ← plus:正,プラス(副詞)
- Aber {n}:困難 ← aber:しかし(接続詞)
- Radical {n}:基,根 ← radical:急進的な(形容詞)
- Reich {n}:帝国 ← reich:富んだ,豊かな(形容詞)
- Tschüs {n}/Tschüss {n}:さようなら ← tschüs/tschüss:さようなら(間投詞)
- Blabla {n}:斯々然々 ← bla, bla, bla:ぺちゃくちゃ(間投詞)
- Ich {n}:私,自我 ← ich:私(人称代名詞)
- Nichts {n}:無 ← nichts:無(不定代名詞)
- Man {n}:世人 ← man:人,人々(不定代名詞)
- 通常、人を表す名詞は男性名詞ですがこれは唯一の例外です
- 意味はハイデガー哲学を研究している哲人に訊いてください
例外:
- Eins {f}:一の数 ← eins:一(基数詞)
基数詞は女性名詞というルールが優先ということでしょうか。もちろん Zwei {f} 以降も女性名詞です。
文章を名詞化したものは中性名詞
- Vergissmeinnicht {n}:勿忘草(ワスレナグサ) ← Vergiss mein nicht!(私を忘れないで)
- Rührmichnichtan {n}:鳳仙花(ホウセンカ) ← Rühr’ mich nicht an!(私に触れないで)
- これらの文章は、それぞれの花の花言葉になっています。
- Lebewohl {n}:別れのあいさつ ← Lebe wohl!(お健やかにお過ごしください)
- Lebewohlsagen {n}:暇乞い(いとまごい) ← Lebewohl sagen(別れのあいさつを告げる)
例外:
- Kannitverstan {m}:もの知らず ← kann nicht verstehen.(わからないという意味のオランダ語から)
- Tunnichtgut {m}:ろくでなし ← Tun nicht gut.(ろくなことをしない)
ここでは人を表す名詞は男性名詞というルールが優先するようです。
また引用文など文章そのものも中性名詞です:
- In der Welt sein {n}:世界内存在
- “Ich bin der Weg, die Wahrheit und das Leben” {n}:「私が道であり、真理であり、いのちなのです」(新改訳聖書より)
- 神の息子とされているイエスの言葉です。
(この稿、続く)